旅行業界ではネット予約が普及し、「旅行会社の窓口はもう不要では?」と思う人も少なくありません。しかし、旅行業界は単なる手配業務を超え、体験設計や安心サポート、地域活性など、今なお重要な役割を担っています。
そこで、旅行業界の存在価値を見直し、今後の可能性と直面する課題を掘り下げ、就職活動にプラスとなる情報を紹介していきます。
旅行業界の基本構造とこれまでの役割
まずは旅行業界の基本的な構造と従来の役割を解説していきます。
旅行業界の主なビジネスモデル
旅行業界は事業形態が多岐にわたりますので、大きく分類すると、4つのモデルが存在します。
- パッケージツアー販売(募集型・受注型企画旅行)
「○○ツアー5日間●●円!」という広告でおなじみなのが、募集型企画旅行です。旅行業界でもよく見かける販売方式であり、あらかじめ旅行内容(行程・宿泊・食事・観光地など)を設計して、複数の顧客に販売する形式です。
旅行会社が宿泊施設・航空会社・バス会社などと契約を結び、まとまった料金で手配することが可能となりますので、個人で手配するよりも安価になるのが特徴です。
一方、受注型企画旅行は、法人顧客や団体(学校・企業など)からの依頼を受けて、旅行会社がオーダーメイドで設計・実施する形式です。「社員旅行」や「修学旅行」などがこれに該当します。
- 手配旅行(個別手配型)
宿泊、航空券、観光、送迎などをバラバラに予約・手配して、顧客の希望に合わせて旅行計画を組み立てるタイプです。特に富裕層やハネムーン、シニア層など、細やかなニーズに応えることが求められます。
営業担当者の知識・提案力・交渉力が問われる高度な業務です。
- オンライン旅行代理店(OTA)
楽天トラベルやじゃらん、Booking.com、Expediaなど、インターネット上で宿泊や交通手段を予約できる「OTA(Online Travel Agent)」は、近年の旅行業界で急成長してきた新興勢力です。
対面接客を必要とせず、24時間予約が可能という利便性が、若年層を中心に支持されています。
OTAは「販売手数料モデル」が主流で、予約1件あたりの送客手数料を宿泊施設などから得ており、リアル旅行会社とは異なる収益構造を持ちます。
- BtoB旅行(業務渡航・法人営業)
意外と知られていないのが、法人の出張・視察・研修・国際会議(MICE)などに対応する「業務渡航部門」です。大手企業や外資系企業の海外出張では、渡航規制やVISA要件、通訳・現地サポートの手配まで対応する必要があり、旅行会社の専門性が高く評価される領域です。
業界構造と主要プレイヤーの整理
旅行業界には、大手総合旅行会社から中小の地域密着型代理店、オンライン専門のOTAまで、さまざまな事業者が存在します。
・ 総合型大手…JTB、HIS、日本旅行:国内外問わず多数のチャネルと拠点を持つ
・ 専門型中堅…クラブツーリズム、近畿日本ツーリスト: 特定層・分野に特化した強み(シニア、バス旅行など)
・ OTA…楽天トラベル、じゃらん、Expedi: 利便性重視、価格競争が激しい
・ 地域密着型… 地元旅行会社、商工会ツアー部門:顧客との長期的関係・柔軟な対応
旅行業界が果たしてきた社会的役割
旅行会社は単に「チケットやホテルを予約するだけの存在」ではありません。旅行業界がこれまで果たしてきた社会的役割をみていきましょう。
● 安心・安全の提供者
旅には常にリスクがつきものです。天候、交通、病気、トラブルなど、そうした状況に対して、旅行会社は保険の案内、24時間サポート、現地連絡先の提供などを通じて、旅行者に「安心の設計」を提供しています。
●. 旅行を通じた経済循環の担い手
旅行業界は、観光地への送客を通じてグローバルな地域経済の活性化にも貢献しています。特に団体旅行や自治体連携ツアーなどでは、「消費者から地方へのお金の流れをつくる」という機能を推進してきました。
● 文化・国際交流の促進
海外旅行が一般化した昭和〜平成期、旅行会社は「異文化への架け橋」として、教育旅行・国際交流事業・スタディツアーなどを支えてきました。インバウンド観光の受け入れ窓口としても、言語・宗教・食文化に配慮した手配が不可欠であり、文化・国際交流の促進に貢献しています。
旅行会社の存在価値が今後も必要な理由
スマホの爆発的普及を受けて、インターネットで何でも予約できる時代になっていますが、旅行会社がなくても問題ないという考えも見受けられます。
旅行会社の存在価値が誤解を受けているのも事実といえるでしょう。
定型的なホテル予約・航空券予約は、個人でも簡単にスマホから購入可能です。しかし、複雑なルート設計や多人数での旅行・乳児や高齢者、障がい者を含む旅行となると、途端に難易度が上がります。
また、災害・パンデミック・宗教・国際情勢の不安定化など、不確実性が高まる時代においては、「相談できるプロ」の存在はむしろ重要性を増しているのです。
旅行業界の存在価値は本当に「なくなる」のか?
OTA(オンライン旅行代理店)の台頭や、SNSによる情報拡散の普及により、「自分で旅を組める時代」という認識が広がっており、旅行業界の存在価値に疑問を持つ人たちがいるものです。
そこで、本当に旅行業界は存在価値を失ってしまったのか、旅行業界の本質的な価値を多面的に考察します。
「ネット予約で十分」という誤解
●“簡単な旅行”ならネットで済む
たとえば1泊2日の温泉旅行や、東京~大阪の出張など、単純な旅程であれば、OTAで検索・予約し、クレジット決済すればすぐに完了します。
● 実は難しい「旅の設計」
一方で、以下のような条件が加わると、個人では急に手に負えなくなるケースが増えます。
・ 複数の都市を巡る周遊型旅行
・ 高齢の家族を含む旅行でのバリアフリー対応
・ 子連れ・ベビーカー対応の施設や移動手段
・ 食事制限(アレルギー・宗教など)のある旅
・ 渡航制限やビザ条件が国ごとに異なる海外旅行
・ 渡航先での緊急医療・言語対応
これらをネット情報だけで完璧に把握するのは困難です。しかも、万が一のトラブル時に誰も助けてくれません。つまり、旅行会社の見えない価値は、「旅を設計する専門性」と「安心の伴走」にあります。
旅行業界が持つ「人間的付加価値」
● ひとりずつの希望に「耳を傾ける」という仕事
旅行会社の営業担当者は、単に商品を販売するだけでなく、顧客の趣味嗜好、性格、同行者との関係、予算感、旅の目的(癒し、記念日、リフレッシュ、教育)などを深くヒアリングしたうえで、その人にとって最適な旅を提案します。
・「温泉でのんびりしたい」と言いつつ、実はアクティブに観光もしたいという矛盾した希望を内在している人
・「家族旅行でトラブルが少ない宿がいい」と漠然と伝える人に対し、貸切風呂や部屋食をおすすめする判断力
このような潜在ニーズを引き出す力は、AIやアルゴリズムでは代替しづらい部分といえるでしょう。
● 選択肢より決断の手助け
ネットでは数千件のホテル・数百のツアーが並びますが、多くの人が「選べない」「違いがわからない」という迷子状態に陥っています。旅行会社は、膨大な選択肢の中から顧客にとってベストな提案を導き出す「決断の手助け」的な役割を担っています。
コロナ禍で再確認された「プロの必要性」
● 突如として変わった旅の前提
新型コロナウイルスの感染拡大により、旅行にまつわる前提は根底から覆されました。国境が閉じ、PCR検査が必須となり、ワクチン証明や隔離期間なども加わり、個人では把握しきれない情報が数多く発生しました。
この混乱のなかで旅行業界が果たした役割は大きく、以下のような対応が評価されています。
・ 最新の入国・出国ルールの把握と説明
・ キャンセル・変更時の柔軟な対応
・ ワクチンパスポートや各国政府の情報の翻訳・解説
・ 帰国時のPCR検査予約の代行手配
これらはOTAや検索サイトでは対応できない「人による安心のケア」といえます。
旅行業界は商品販売ではなく体験創造業を模索
今後、旅行業界が存在価値を維持・発展させていくためには、単なる商品の販売者ではなく、「体験をプロデュースする存在」としての意識が不可欠です。
ネットや動画で簡単に観光地の景色を知ることが可能となっていますが、旅行業界が提供すべき新しい価値として、下記3点があります。
・ 単なる交通手段ではなく「旅全体のストーリー性」
・ 宿泊予約ではなく「その土地の空気・文化に触れる導線」
・ 定番観光地ではなく「自分だけの思い出をつくる場」
これらの体験は利用者が「この旅は自分にしかできなかった」と思えるものであり、これこそが旅行業界のプロとしての存在価値ともいえます。
今後の旅行業界が直面する6つの課題
旅行業界は、その本質的価値が再認識されつつある一方で、構造的・制度的・社会的な課題に直面しています。単なる一過性の危機ではなく、旅行業界全体が「変革」を求められる岐路にあると言ってよいでしょう。
ここでは、特に影響が大きいとされる6つの課題を解説していきます。
① OTA(オンライン旅行代理店)との競争激化
● OTAの圧倒的利便性と価格競争
インターネット上で予約・決済まで完結するOTAは、スマホ1台で手軽に旅行を手配できるという強力な魅力を持っています。
AIによる最安値検索や、ポイント還元、口コミ機能などもあり、特に若年層やビジネスパーソンにとってOTAが「第一選択肢」となっているのが実情です。
● 旅行会社との違い
旅行会社は、対面による丁寧なヒアリングやトラブル対応などで価値を発揮しますが、OTAとの価格・スピード・可視性の差を埋めきれないまま競争に巻き込まれてしまう現実があります。
② 人材不足と若手離れ
● 給与水準と労働環境のミスマッチ
旅行業界はやりがいはあるものの、待遇面は厳しい業界といわれています。長時間労働やシーズン繁忙、夜間対応、クレーム処理など、精神的・体力的な負荷が大きいにも関わらず、給与水準が他業界より低い傾向です。
● 若手の離職と業界敬遠
結果として、旅行業界を志望する学生や若手人材が減少しているのが現状であり、採用しても数年で離職するケースが多く、「プロ人材が育たない」という構造的な課題が発生しています。
デジタルシフトの遅れ
● 紙文化の根強さ
FAX、紙パンフレット、印刷された見積書など、一部の旅行会社では、いまだにアナログ業務が中心であり、社内システムの統合やクラウド化が遅れています。これにより、業務の非効率さと人件費の増大も課題です。
Webサイトの更新が遅い、SNS対応ができていない、チャットボットや予約自動化ツールがないというのは、デジタル時代における「顧客の期待」に応えきれていない企業も多く存在します。
④ サステナビリティへの対応
● 観光公害(オーバーツーリズム)の問題
京都、鎌倉、富士山など、一部の観光地に人が集中しすぎて地域住民の生活に支障をきたす「観光公害」が問題となっているものです。旅行業界は、単なる送客役ではなく、観光地と観光客のバランスを設計する役割が求められるようになっています。
⑤ 地方観光・インバウンドの偏在
● 地方観光の取り残され感
都市部や有名観光地ばかりに旅行者が集中し、地方では集客に苦しむ観光地が多く存在しているものです。アクセスの不便さ、情報発信力の弱さ、人手不足などが要因ですが、旅行会社が地方と都市を「つなぐ媒介」として再評価されるには、地域との協働企画が鍵となります。
● インバウンド依存とそのリスク
コロナ前は訪日観光客が3,000万人を超え、多くの旅行会社がインバウンド業務に注力していましたが、パンデミックで一気に需要が蒸発し、特定マーケットに偏る経営戦略の危険性が露呈しました。
近年はコロナ前に追いついていますが、またどのようなパンデミックが起きるか分かりません。円相場にも影響が出やすいので、インバウンドに依存しすぎるのはリスクが高いといえるでしょう。
⑥ 旅行需要の多様化と細分化
● 旅行スタイルの変化
現代の旅行者は「団体ツアーで名所を回る」だけでなく、多様なスタイルを求めています。
・ ワーケーション(仕事+観光)
・ 推し活旅行(ライブ遠征・聖地巡礼)
・ 自然回帰型(グランピング・田舎体験)
・ 学び直し旅行(語学・SDGs体験)
これらのようなニッチで個別性の高いニーズに対し、画一的なパッケージ旅行では対応しきれません。旅行業界には、柔軟な企画力・マーケティング力が課題です。
旅行業界が見出すべき5つの新たな価値
旅行業界が生き残り、さらに進化するためには、従来型のビジネスモデルに固執せず、「新たな存在意義」を再定義する必要があります。ただ「モノを売る」のではなく、「体験」や「共感」、「ストーリー」を提供する業態へとシフトすることが求められています。
ここでは、旅行業界がこれから担うべき「5つの価値」について具体的に解説します。
①「体験」の設計力
現代は「モノ」ではなく「コト(体験)」、さらには「トキ(その瞬間・場面)」に価値が置かれる時代です。旅行業界は、単に宿や交通を手配するのではなく、「忘れられない瞬間を演出するプロ」としての力量が問われています。
● 体験型ツアーの提案例
・ 歴史の語り部と巡る街歩きツアー
・ 地元の職人と一緒に行うものづくり体験
・ SNSで映える“非日常空間”での演出型旅行
顧客のライフスタイルに合わせて、自分では設計できない感動体験を提案できる旅行会社こそ、今後も必要となっていくでしょう。
② 地域との共創モデル
地方観光地では「来てほしいけど、どう呼べばいいか分からない」「旅行者向けの魅力的な商品が作れない」といった課題が多く存在します。旅行会社は単なる送客業者ではなく、地域と共に観光商品をつくりあげる存在としての進化が必要です。
● 共創型プロジェクトの例
・ 地元農家と連携した「農業体験型ステイ」
・ 商店街の空き店舗を活用した「町ごとホテル構想」
・ 廃線跡地や廃校を再利用したイベント型観光
旅行業者が行政、地域住民、観光協会、宿泊施設を巻き込みながら、地域資源の価値化と持続化を促進することが社会貢献としても求められています。
③ BtoB旅行・法人営業の拡大
企業研修、報奨旅行(インセンティブ)、国際会議(MICE)など、法人向け旅行市場は利益率が高く、景気に左右されにくい安定市場です。
旅行業界は、こうしたBtoB需要に対応できるコンサル的な営業力と企画提案力を高めることが、生き残りの鍵になります。
● 法人顧客に提供できる価値
・ 生産性の高い移動設計(時間効率・交通手段の最適化)
・ 社員のモチベーションを高める体験設計
・ 安全管理、リスク分散、危機対応策の提供
コロナ禍を経て、「オンラインでは得られないリアルな接触価値」への関心が高まっている今こそ、企業向けの「非日常の体験価値」の提供が新たな成長へつながります。
④ 災害・有事対応のコンサル的役割
コロナだけでなく、地震・台風・航空機トラブル・国際紛争など、旅には常に予期せぬリスクがつきものです。こうしたリスクに対応できる「専門家」として、旅行業者が信頼される存在になるには、リスクマネジメント力の強化が不可欠です。
● コンサル型旅行設計の一例
・ キャンセル規定や旅行保険の詳細な説明と最適設計
・ 複数ルート設計によるリスク分散
・ 非常時の代替プラン・現地サポート体制の構築
旅行会社が単なる予約代行者から、安心と安全の設計者へと進化すれば、価格競争とは無縁の独自価値を築くことができます。
⑤ 旅行+αのライフスタイル提案
旅行はキャリアの節目、子育て、健康維持、自己実現、教育、結婚、老後など、あらゆるライフイベントにおいて、旅が果たす役割はますます大きくなっています。
● ライフスタイル別の旅行価値
・ 【教育型】親子で参加するSDGs学習旅行、修学旅行のアップデート
・ 【健康型】ウェルネス・リトリート旅行、ヨガや断食体験付きプラン
・ 【人生節目型】還暦・古希旅行、成人式記念旅行、終活旅行
旅行業者が顧客の人生ステージを捉え、それに合った旅行体験を提案できれば、単発の取引から「長期的な人生パートナー」として信頼される業態へと進化できます。
今後のキャリアとしての旅行業界
「旅行業界=不安定」「給料が低そう」「やりがいだけでは食べていけない」という声が広がると、就活生や若手層から敬遠されてしまいます。
旅行業界はコロナ禍で大きな打撃を受けた産業であり、業績悪化・人員削減・店舗閉鎖などネガティブなニュースが多く報道されました。
そこで、旅行業界は若者が挑戦する価値のあるキャリアを描けるフィールドであることを解説していきます。
人に喜ばれる「やりがい」と「感謝」が直に返ってくる仕事
旅行業の最大の魅力は、「人の笑顔に直接つながる仕事」であることです。家族旅行、卒業旅行、ハネムーン、社員旅行、還暦祝い旅行など、人生にとっての節目や記念日を、一緒につくりあげていく喜びは、他の業界では得がたいものです。
旅行終了後にお客様から「本当に良い旅になった」「あなたに相談してよかった」と言ってもらえることは、何物にも代えがたいモチベーションになります。
営業・販売の仕事は他にもありますが、旅行業界は特にストーリー性が強く、記憶に残る仕事です。
「母が闘病から回復して、どうしても行きたかった沖縄旅行。宿も食事も完璧に手配してくれて、本当に感謝しています」
「プロポーズをサプライズで演出したいという要望に応えてくれた。一生の思い出になった」
このような体験は、自身のキャリアにも深い意味をもたらすものです。
提案力・調整力・交渉力が身につく
旅行業では、顧客の希望を汲み取りながら、最適なプランを提案する力が必須です。その過程では、「質問力」「共感力」「説明力」が鍛えられます。
さらに、数泊の旅程を設計するには、移動・食事・観光地・天候・予算などをすべて考慮しながら、整合性のあるスケジュールを組む必要があります。これはまさに、プロジェクトマネジメントの訓練そのものです。
また、旅行会社の担当者は、顧客と現場をつなぐ存在でもあります。宿泊施設や交通事業者との価格交渉や条件調整などを通じて、ビジネスコミュニケーション力・調整力が飛躍的に向上します。
これらのスキルは、将来的に他業界でも通用するスキルとして高く評価されます。
グローバルな視野を活かせる・広げられる業界
インバウンド需要の増加により、英語・中国語・韓国語などの語学スキルを活かせる場面は年々増加しています。また、海外旅行の手配においては、各国の文化・制度・マナーを理解したうえでの対応が求められるため、自然とグローバル感覚が磨かれます。
旅行業界は航空会社・ホテルチェーン・観光局・現地ガイドなど、国際的なステークホルダーと連携する機会が非常に多いものです。若手のうちからこうした環境に身を置けるのは、キャリア形成において大きな財産となります。
「AI時代」においても人間にしかできない仕事が残る
今後の旅行業界の仕事の一部は、AIが担うようになる可能性が高くなります。ただ、顧客の言葉にならないニーズを察し、本人も気づいていない「最適な旅」を提案する力は、人間にしかできません。
また、トラブル時の対応や、状況の変化に応じた柔軟な判断なども、経験と人間性に裏打ちされた応用力が必要です。
旅行業界の価値は安心と信頼です。単なる価格比較や効率性では測れない、「人に任せたい」「この人に頼みたい」と思われる存在になることが、これからの旅行業界にも重要です。
旅行業界に関するQ&A
就活生が気になる、旅行業界に関する疑問や質問を紹介していきます。
Q1. 旅行会社って今後なくなるって本当?
A. なくなるのではなく、価値を生み出せない会社が淘汰される時代です。
ネットで航空券やホテルの予約ができる時代において、「旅行会社不要論」は一定の説得力があります。ただし、それは単に予約するだけのサービスに特化した場合であり、複雑な旅程設計、安心・安全のサポート、カスタマイズ性の高い体験など、プロの知識と提案力が求められる領域では、むしろ旅行会社の価値は高まっています。
Q2. 旅行業界は不安定で将来性がない?
A. 変化の大きい業界だからこそ、進化のチャンスがある成長分野です。
コロナ禍で大きな打撃を受けたことは事実ですが、それによって旅行業界が変化・進化を始めたのもまた事実です。
オンラインツアー、地域共創、教育旅行、法人需要の拡大など、新しい事業領域が続々と生まれています。不安定さ=挑戦の余地と捉え、変化を恐れない企業や人材にはむしろチャンスが広がっています。
Q3. 今から旅行業界に就職・転職するのはリスクが高い?
A. 一般的な安定だけを求めるなら避けるべきですが、人と関わる仕事に価値を感じるなら有望です。
旅行業界には給与水準や労働環境には課題が残っています。ただし、「人と関わる仕事が好き」「相手の喜びが自分のやりがいになる」という価値観を持つ人にとって、旅行業界は非常に充実感のある職場です。
また、得られるスキルは営業・企画・交渉・語学など、他業界でも活かせる汎用性が高いため、キャリアの幅も広がります。
Q4. AIやチャットボットで旅行業界の仕事はなくなるのでは?
A. 業務の一部は自動化されても、「人間にしかできない部分」が残るからこそ価値が出ます。
AIは宿泊検索やルート案内、簡単な問い合わせ対応などには非常に優れています。しかし、「言葉にならない希望を汲み取る力」「臨機応変な対応」「信頼関係をベースにした提案」といった、人間同士の関係性に基づくサービスは、今後も人にしかできません。
Q5. 観光業の復活は本当に期待できる?
A. 国内外ともに旅行需要はすでに回復傾向で、むしろ今後は質が重視される時代です。
コロナ以降、「旅に出たい」という欲求は一時的に抑え込まれていましたが、2023年以降、インバウンド・国内旅行ともに急回復しています。
旅行業界は、ただの観光手配ではなく、「人生の一部としての旅」を創造する役割へと進化しており、今後ますますその価値が問われていきます。
まとめ
旅行業界はコロナ禍やデジタル化の波に直面しながらも、体験価値の提供や地域共創、安心のサポートといった独自の強みで存在価値を再確認されています。
旅行業界の今後は、画一的なツアーから個別化・多様化への対応が求められ、旅行会社は単なる仲介者から「感動をつくる伴走者」へと進化が必要です。
就活生にとっても、人間力を活かし、グローバルかつ柔軟なキャリアが築ける可能性の高い業界といえるでしょう。変化の時代にこそ、旅行業の真価が問われているといえます。