就職活動における面接では、自己PRや志望動機といった内容面に注目が集まりがちですが、実はそれ以前に見られているのが「マナー」です。どんなに立派な話をしても、社会人としての基本的な態度や礼儀が欠けていれば、それだけで「一緒に働きたくない」と判断されることもあります。
企業が面接を通じて確認したいのは、スキルや経歴だけでなく、社会人としての基礎力と信頼性です。特に新卒の場合、ビジネスマナーの基礎をきちんと身につけているかは、選考の大前提といえます。
就活生が意識すべきマナーの“本質”マナーは「型」ではなく「相手目線」
面接マナーというと、「入室時のお辞儀の角度」や「椅子の座り方」といった細かい所作にばかり気を取られがちです。しかし、マナーの本質は、相手に不快感や不安を与えないための気遣いです。
たとえば、
面接時間の5分前に到着する
入退室時にしっかり挨拶する
清潔感のある服装・身だしなみを整える
相手の目を見て話す
これらの基本ができていれば、完璧な所作でなくても好印象を持ってもらえるのです。
第一印象は「会話前」に決まっている
人は出会ってわずか数秒で相手の印象を判断するといわれています。つまり、面接官があなたの印象を形成するのは、自己紹介や質問が始まる前です。
面接官がチェックしているのはこんなポイント
遅刻せず、余裕をもって到着しているか
入室時のノックや挨拶の声が明るいか
椅子に座る姿勢がだらしなくないか
名乗り方が丁寧か
これらの所作は「人柄」や「誠実さ」を映し出します。逆に、やる気がありそうに見えても、挨拶が小さかったり、服装に清潔感がないだけで、評価は下がることもあります。
面接に向けた“準備段階”のマナーも重要
面接マナーは当日だけの話ではありません。事前の準備段階にも、採用担当者は敏感です。
1. メール・電話での連絡対応
メールの返信は24時間以内に丁寧な文面で行う
電話対応は明るく簡潔に、出られなかった場合は折り返す
件名や署名を入れて、社会人らしい文面を心がける
特に、メールの文章で「礼儀正しい人かどうか」が如実に伝わります。社会人と接する以上、学生の延長ではなく、ビジネスの場にふさわしい対応が必要です。
2. スケジュール管理の正確さ
ダブルブッキングや直前のキャンセルは避ける
面接当日の天候や交通状況にも備えて行動する
「当たり前の時間感覚」を身につけておく
リマインダーを設定したり、5分前行動を徹底することは、信頼感に直結します。スケジュールのルーズさは「入社後も同じだろう」と思われてしまうため要注意です。
面接会場でのふるまい:到着〜入室前まで
ここでは、当日会場に到着してから面接室に入るまでのマナーを整理しておきます。
1. 受付での対応
「◯時に面接のお約束をいただいております、○○大学の○○と申します」と丁寧に伝える
携帯電話は受付前にマナーモードにしておく
挨拶は相手の目を見て、はっきりと
2. 控室でのふるまい
荷物は足元に置き、背筋を伸ばして待機する
スマートフォンを操作しない(緊張していても手持ち無沙汰はNG)
呼ばれたら元気よく返事をし、すぐに行動に移す
このように、面接開始前にも“見られている時間”があることを理解し、常に“誰かに見られている意識”を持つことが重要です。
まとめ:マナーは“あなたの信頼度”そのもの
✅ 面接官が見ているのは、スキルだけでなく「信頼できるかどうか」
✅ マナーは完璧さではなく「相手を不快にさせない気配り」
✅ 面接の第一印象は、会話前にほぼ決まっている
✅ 準備段階のメール対応やスケジュール感も評価対象
✅ 受付・控室・呼ばれるまでの所作も「面接の一部」
面接中に見られている“振る舞い”の正解とは?
面接では、話の内容と同じくらい立ち居振る舞いが評価に大きく影響します。これは、単にお辞儀の角度や姿勢の美しさといった形式的なものだけではなく、その人がどれだけ社会人としての基礎を身につけているかを映す鏡として見られるのです。
今回は、面接当日の「入室から退室まで」の基本マナーを、就活生が安心して実践できるように段階別で整理して解説します。
入室時のマナー:第一印象をつくる“3秒”
ノックは「3回」が基本
ドアの前に立ち、深呼吸をしてから「3回ノック」が原則です。「2回」はトイレ確認のノックなのでNGです。ノックの音量は、面接室内に聞こえる程度にはっきりと。反応があれば、「失礼します」と声をかけてから入室します。
入室から挨拶までの一連の流れ
ドアを静かに開ける
ドアを閉めて、ドア側を向いたまま閉める(音を立てない)
面接官の方に向き直り、一礼しながら「失礼いたします」
椅子の横まで移動して、立ったまま「○○大学の○○と申します。本日はよろしくお願いいたします」
面接官に「どうぞおかけください」と言われてから、再び「失礼いたします」と言って着席
この動作を一つひとつ丁寧に行うことが、社会人としての落ち着きや礼儀正しさを伝える材料になります。
着席中のマナー:姿勢と表情がすべてを語る
面接中の着席姿勢や所作も、評価ポイントの一つです。ここで大切なのは、「受け身になりすぎず、かといって自己主張が強すぎない」バランスです。
正しい姿勢を保つ
背もたれには寄りかからない(腰はやや浅めにかける)
両手は太ももの上に自然に置く
膝はそろえる(男性は軽く開いても可だが、広げすぎはNG)
足元は揃える(貧乏ゆすりや足を組むのは厳禁)
特に緊張しているときは無意識に姿勢が崩れがちになるため、面接中はこまめに意識を戻すことが大切です。
表情と視線:面接官の“目”を見る
目を合わせて話すことは、誠実さと積極性を示します。ずっと凝視する必要はありませんが、相手の眉間から目のあたりを見るよう意識しましょう。
また、話を聞いている間にうなずくことも非常に効果的です。相手の話に共感や理解を示すこのアクションは、面接官に「会話が成立している」「反応がしっかりある」という安心感を与えます。
質疑応答中の振る舞い:言葉以上に伝わるもの
話し方に“マナー”をにじませる
話す前に「はい、ありがとうございます」などの前置きを入れると丁寧な印象に
自分の話が終わった後に「以上です。ありがとうございました」と添えると締まりが出る
相手が話している途中でかぶせて話さないこと
話の内容自体に自信がなくても、丁寧な語り口とリズムを保つことで「誠実で話しやすい印象」を与えることができます。
咄嗟の質問への対応は落ち着きがカギ
たとえば予想外の質問を受けたとき、焦って早口になるよりも、「少しお時間をいただけますか?」と間を取ることで、落ち着いた印象を与えられます。
就活生が「うまく答えよう」と考えるのは当然ですが、実際に見られているのは“どんな態度で受け止めるか”の方です。
退室時のマナー:最後まで好印象を残すコツ
面接が終わったあとの退室でも、まだ評価は続いています。特に印象に残るのは、「立ち去り方」です。
退室の流れ
面接終了後、「本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました」と椅子の横で一礼
ドアの前まで移動し、もう一度面接官の方に向き直って「失礼いたします」とお辞儀
ドアを静かに開け、退出する
廊下や建物を出るまで気を抜かない
エレベーター内やビルの出入口などでも、企業の社員とすれ違うことがあります。会社の敷地を出るまでは「見られている意識」を持ち続けることが肝心です。
NGマナー例:知らないと損する“減点ポイント”
面接の場でありがちなNGマナーをあらかじめ知っておけば、無意識の失敗を防ぐことができます。
ドアを勢いよく開ける/閉める
お辞儀が浅い・タイミングが不自然
着席時に椅子を引きすぎる音が大きい
鞄を置く場所が無造作(基本は椅子の横か足元)
会話中に腕を組む・顎を触るなどのクセが出る
マナー違反は、「本人の意図とは関係なく」マイナス印象として記憶に残ります。すぐに矯正できない場合は、模擬面接で癖を指摘してもらうのがおすすめです。
まとめ:細部のマナーが“社会人としての信頼感”につながる
✅ 入室から退室までの流れを一通り練習しておく
✅ 着席中は、姿勢・表情・相槌が重要な非言語コミュニケーション
✅ 質問に答える際も、語尾の丁寧さと間の取り方が鍵
✅ 最後の一礼までが“面接”という意識を持つ
✅ 細かい点の積み重ねが、「一緒に働きたい」と思われる決め手になる
オンライン面接で好印象を与えるマナーとは?
新卒就活の面接形式は、近年オンラインが主流となりつつあります。企業にとっても学生にとっても移動の手間が省けるメリットがある一方、“画面越しだからこそ”伝わりにくくなる印象やマナーの差が結果に大きな影響を与えています。
オンライン面接では、オフラインとは違った注意点や配慮が必要です。今回は、オンライン面接で評価されるマナーや環境づくりについて徹底解説していきます。
オンライン面接で求められるマナーの特徴
基本は「オフライン面接と同じ心構え」
面接官が見ているのは、「オンラインだから」という免除ではなく、対面同様の誠実さや社会人としての態度です。画面越しであっても、姿勢、表情、言葉遣い、身だしなみは手を抜いてはいけません。
特に以下の3点は、オンラインならではのマナーとして重要です:
通信・機材トラブル時の対応力
画角・明るさなどの映像環境
発声・聞き取りやすさ(マイクの品質含む)
対面以上に「準備力」「段取り力」が問われるのが、オンライン面接の本質です。
面接前の準備:環境と機材を整える
ネット環境と機材チェックは必須
通信回線は安定しているか?
→Wi-Fiではなく有線LANが推奨。少なくとも接続テストは必須。
パソコンのカメラ・マイクは正常か?
→カメラは目線の高さに設置。マイクは外付けの方が明瞭な音になることも。
直前に不具合が起こって慌てないためにも、前日までに必ず確認しましょう。可能であれば、模擬面接を友人とZoomやGoogle Meetなどで行うことを推奨します。
背景・光の調整も“第一印象”を左右する
背景は白壁やシンプルなカーテンが無難
→散らかった部屋やベッドが映るとマイナス。バーチャル背景より自然な背景の方が望ましい。
顔が暗くならないよう自然光またはリングライトを使用
→逆光にならない時間帯・部屋の配置にも注意。
見た目の印象は、面接官にとって「この人は準備できている」「誠実そう」という評価に直結します。
面接中に意識すべき3つのマナー
1. 目線は“カメラ”、姿勢は“真っ直ぐ”
面接官の顔が画面に映っているとはいえ、自分が見ているのが“画面”である限り、相手からは「目が合っていない」ように見えます。これはオンライン特有のズレです。
目線はカメラレンズに合わせる
画面下部ではなく、カメラ上部の真正面を見る
背筋を伸ばし、上半身が画面中央にくるよう配置する
これだけで印象が数段アップします。
2. 話すテンポと声のトーンを少し“ゆっくり・明るく”
オンラインでは、音声がタイムラグで聞こえたり、語尾が聞き取りづらくなることがあります。
少しゆっくりめに話す
笑顔と明るめの声を意識する
相槌も「はい」「そうですね」など言葉を添える
沈黙や間も“通信エラー”と誤解されやすいため、意識的に反応を返しましょう。
3. 音声・通知などの外部トラブル対策面接前にスマホやパソコンの通知をすべてオフ
ドアベルや同居人の声など、生活音対策も大切
周囲の騒音が避けられないときは、あらかじめ面接官に一言伝える
万が一通信トラブルで中断した場合も、「すぐに再接続できるか」「メールで再連絡できるか」を準備しておくと安心です。
オンライン面接ならではのミスと防止策
よくあるNG例
カメラ目線になっておらず、常に下を見て話している
服装がラフすぎる(上だけスーツで下がパジャマなど)
部屋が散らかっていて生活感が見えてしまう
話している途中で通知音やLINEが鳴る
面接中に家族が入ってきてしまう
これらは面接に対する“温度感の低さ”として見られてしまいます。
防ぐための対策チェックリスト
✅ 前日までにデバイス・ネット環境を必ず確認
✅ 部屋の明るさ・背景を確認し、カメラ位置を調整
✅ 面接前に全通知OFF・デバイス再起動
✅ 家族や同居人に面接中であることを共有
✅ 服装は「画面に映る部分+α」でしっかり整える
まとめ:オンライン面接では“準備”が信頼をつくる
✅ 対面と変わらない心構えを持つことが前提
✅ 環境・機材トラブルは「自己責任」として見られる
✅ 表情・声・姿勢は通常よりワンランク明るく
✅ 目線と話し方で「誠実さ」を演出する
✅ 面接は終了後の挨拶・退出まで見られている意識を持つ
面接マナー違反の実例と、印象を立て直す方法
これまでに面接マナーの基本、具体的な動作、オンラインのポイントなどを見てきましたが、どれだけ準備していても、本番で思わぬ失敗をしてしまうことはあります。しかし、面接におけるミスは取り返しのつかないものばかりではありません。
今回は、実際にありがちなマナー違反の事例と、その対応方法・立て直し方について紹介します。「完璧であること」よりも「誠実な対応」が信頼を勝ち取るカギとなることを理解しましょう。
よくあるマナー違反とその影響
遅刻:企業側の印象を大きく左右する最悪のNG例
遅刻は、マナー違反の中でも最も重い部類に入ります。特に新卒採用においては、「社会人としての時間管理能力がない」と判断されるため、たとえ5分でも大きな減点要素です。
対応策:
電車遅延や天候など不可抗力の場合は、できるだけ早めに連絡を入れる。
自分のミス(寝坊・確認不足など)でも、素直に謝罪し、言い訳せず「次は絶対に繰り返さない」旨を伝える。
再度面接の機会がもらえた場合、万全の準備と丁寧な対応で印象を挽回する。F服装の不備:清潔感の欠如はマイナス印象
リクルートスーツであっても、しわ・汚れ・だらしない着こなしは、清潔感や社会性を疑われます。
よくあるNG例:
シャツのボタンが外れている
ネクタイが歪んでいる
髪が乱れている
鞄がボロボロ・靴が汚れている
対応策:
面接前に全身鏡で確認する習慣をつける
清潔感がある=見た目の“安心感”と心得る
万が一その場で気づいた場合も、「着崩れていて申し訳ございません」と伝えれば、誠実な印象を与えられる
態度・所作に関するマナー違反と対応策
声が小さい/早口で聞き取れない
どんなに内容が良くても、相手に伝わらなければ意味がありません。
対応策:
「お声が少し小さく聞こえました」と言われたら、素直に反省し、すぐ修正する
面接後に録音して練習するなど、声の調整を習慣にする
あいさつ・お辞儀のタイミングがおかしい
慣れていない就活生に多いのが、あいさつとお辞儀のタイミングがズレて不自然になってしまうパターンです
対応策:
「あいさつ→お辞儀」が原則。セットで自然なリズムを練習
「お辞儀の角度」よりも「丁寧さ」と「一貫性」が重要
相手の話に反応がない/表情が硬い
コミュニケーションは、話す内容だけでなく表情・相槌・アイコンタクトを含めた総合力です。
対応策:
リアクションを控えすぎると「反応が薄い学生」と判断される
うなずき、笑顔、共感の表情は積極的に出してOK
“やってしまった”と思ったときの立て直し方
その場でリカバリーできるポイント
「緊張して言葉が詰まってしまった場合」
→「申し訳ありません、改めてお答えさせてください」と冷静に対応
「答えを間違えてしまった場合」
→訂正が可能なタイミングなら、「先ほどの発言について補足させていただけますか」と前向きに修正
「質問の意図を読み違えた場合」
→気づいたら「理解が不十分だったかもしれません、確認させてください」と素直に聞き直す姿勢がベスト
後日フォローで印象を回復する方法
失敗したと自覚した面接でも、お礼メールや手紙でリカバリーできる可能性があります。
感謝の気持ちに加えて、「本日は緊張で思うようにお伝えできませんでしたが、〇〇に対する意欲は変わりません」と記載
短く丁寧に、前向きな姿勢を忘れずに
企業によっては、こうした“礼儀ある誠実さ”を評価して、次の選考へ進めるケースも珍しくありません。
最後に:面接マナーは「減点」ではなく「信頼構築」の要素
面接マナーを“完璧にこなすべき儀式”と捉えると、どうしても形式ばかりに気を取られてしまいます。しかし、採用担当者が本当に見ているのは、「この人と一緒に働きたいかどうか」という観点です。
つまり、マナーとは相手に対する思いやりと配慮をかたちにしたもの。失敗があっても、それを誠実に取り繕い、次に活かそうとする姿勢こそが、評価につながるのです。
まとめ:マナー違反を恐れすぎず、信頼される行動を意識しよう
✅ 遅刻や服装の乱れは、素直な謝罪と誠実な対応でリカバリーできる
✅ 声・表情・あいさつの乱れは、練習と意識で改善可能
✅ マナー違反をしても、その場・その後の立て直しができれば十分評価対象
✅ 面接は減点方式ではなく、信頼を築く場
✅ 大切なのは“マナーを通じて人間性が伝わること”
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