学歴フィルターは本当にあるのか？

高校を卒業してすぐに就職を目指す生徒たちにとって、「学歴フィルター」という言葉は耳にしたことがあるかもしれません。大学や専門学校に進学した同世代と比べて、高卒というだけで求人の幅が狭くなるのではないかと不安を抱く人も多いでしょう。

結論から言えば、学歴による足切りや選考除外は一定数存在します。特に、総合職や事務職、大手企業の一部ポジションでは、応募要件に「大卒以上」などと明記されていることが少なくありません。

ただし、高卒だからといって就職のチャンスがないわけではなく、「高卒採用枠」を積極的に設けている企業や、学歴ではなく人物重視で採用する企業も数多く存在します。

高卒就活生が直面しやすい「壁」とは？

高卒で就職活動を行うにあたり、次のような壁が存在します。

① 求人の情報量が少ない

大学生向けには就職情報サイトや合同説明会が多数ありますが、高卒向けの求人情報は主に「学校を通じた紹介」が中心で、一般公開されない求人が多いのが特徴です。これにより、自分で探せる求人の数が限られます。

② キャリア支援の差

大学にはキャリアセンターや就活講座がありますが、高校ではそこまで手厚くはないのが実情です。履歴書の書き方、面接練習、職場見学の機会などに差が出やすく、準備不足で選考に臨んでしまう高卒生も少なくありません。

③ 学歴による職種の制限

大手企業では、営業・企画・総務といったホワイトカラー職種は「大卒以上」が条件になっているケースが多数です。高卒採用の場合、製造業や技術職、販売職、介護職など、現場系の職種に偏りがちになるという傾向があります。

それでも高卒を採用する企業はなぜあるのか？

学歴を問わない、あるいは高卒を積極採用している企業には、以下のような理由があります。

① 若いうちから長期育成したい企業

特に製造業やインフラ業界では、20代前半から経験を積ませて育成し、将来的に現場のリーダーや管理職に育てていきたいという企業ニーズがあります。大学卒よりも早く社会人経験を積ませたいと考える企業は少なくありません。

② 地域密着型の中小企業

地元の高校からの採用を重視する企業は多く、地域で長く働いてくれる人材を確保するために高卒採用を続けている企業もあります。「地元で働きたい」という志向と企業ニーズがマッチしやすいのが特徴です。

③ 成長意欲や誠実さを重視する会社

飲食、介護、建設、物流などの業界では、経験よりも「コツコツ働けるかどうか」や「素直さ」「向上心」を重視して採用を行うケースが多くあります。面接での人柄や姿勢で評価される傾向が強いため、学歴の影響は比較的少なくなります。

高卒就活の進め方：基本のステップ

高卒生が就活を成功させるには、「どんな企業に向けて」「どのルートで」「何を準備するか」が明確である必要があります。

① 学校推薦ルートを最大限活用する

高卒就活の基本は、高校を通じた推薦求人への応募です。学校に来ている企業の求人は、応募者が限定されているため、倍率が低くなりやすいというメリットがあります。

企業とのパイプがある高校では、内定率が高くなる

1人1社制（同時に1社しか応募できない）が一般的

就職指導の先生と密に相談しながら進める必要がある

② 公開求人・合同企業説明会にも注目

都道府県やハローワークが主催する合同企業説明会（高校生向け）や、地域の若者就職支援機関を活用すれば、学校外の求人情報にアクセスすることが可能です。ここでは、一般応募での就職が可能な企業とも出会えます。

ハローワークの「高卒求人検索コーナー」は要チェック

高卒OKの求人を検索するための民間サービスも増えている

③ 応募前の準備を徹底する

履歴書の下書きは必須

面接でよく聞かれる質問の対策（例：志望動機、自己紹介、長所短所）

インターンや職場見学の経験があれば、その感想や学びを整理しておく

高卒でホワイト企業に入ることは可能なのか？

「高卒だとブラック企業しか選べない」「いい会社は大学を出ていないと無理」といった声を聞いたことがあるかもしれません。しかし、これは必ずしも正しくありません。実際に、高卒で入社し、長く安定して働いている人も多くいます。

重要なのは、「ホワイト企業の定義を見直すこと」と「高卒を積極採用している優良企業を見つける目を持つこと」です。

ホワイト企業とは？

労働時間が適正である（残業が少ない）

有給休暇が取りやすい

離職率が低い（定着率が高い）

福利厚生がしっかりしている

パワハラやセクハラなどのハラスメントが少ない

教育制度やキャリアアップ支援がある

このような条件を満たす企業は「ホワイト企業」と呼ばれますが、学歴に関係なく高卒を正社員として迎え入れているところも存在します。

高卒でもホワイト企業に入れる業界はどこか？

では、どの業界なら高卒でも無理なく働き続けられる可能性が高いのでしょうか。実は「高卒採用＝肉体労働」「休みが取れない」というのは昔の話。今は高卒でも待遇の良い職場は広がっています。

① インフラ・公共性の高い業界

電気・ガス・水道などのインフラ関連

JRや私鉄などの鉄道関連

通信設備・ネットワークの保守管理

これらの業界は生活インフラを支えるため、安定性が高く、労働時間や待遇も整っています。技術職が中心となるため、手に職をつけながら働けるのが魅力です。

② 製造業（特に大手・準大手）

自動車部品、電子機器、食品、医薬品など

トヨタ、パナソニック、キヤノンなどのグループ会社

大手メーカーの工場勤務は、完全週休2日制・賞与年2回・食堂や寮完備など、待遇面で非常に手厚い企業が多く存在します。高卒向けの採用枠もあり、安定したキャリア形成が可能です。

③ 地方銀行・信用金庫（事務職・窓口）

地元に密着した金融機関では、高卒向けの一般職（事務・窓口）を毎年採用しているケースがあります。勤務時間が安定しており、福利厚生も公務員に近いレベルで整っていることが多いです。

ただし、採用人数は少なく競争率はやや高めのため、成績や面接対応力が重要になります。

④ 介護・福祉・保育分野（国家資格が取れる）

最初は給与が低めに見えるかもしれませんが、資格取得支援制度を使えば、介護福祉士・保育士・社会福祉士などの国家資格を目指しながらキャリアアップが可能です。

職場環境の改善が進んでいるため、「今はつらくても数年後には専門職になって働きやすくなる」選択肢として注目されています。

ホワイト企業を見分けるポイント

求人票だけを見ていては、ブラックかホワイトかはわかりません。次の3つの視点で企業を見極めることが重要です。

① 離職率が高すぎないか？

「3年以内離職率」が60％以上などの企業は要注意

毎年大量採用している場合、定着率が低い可能性あり

採用パンフレットや企業説明会で、「3年後の残存率」「若手社員の平均勤続年数」を質問すると、ブラック体質の企業ははぐらかすことがあります。

② 年間休日・有給取得率を見る

年間休日が100日未満の企業はブラック傾向が強い

有給が「取得実績あり」と記載されていない場合も注意

面接時や会社説明会で、「入社2年目以降の平均有給取得日数」を具体的に聞いてみると、その会社の体質が見えてきます。

③ 口コミサイト・職場見学・先輩の声

「OpenWork」「就職四季報 高卒版」などで企業を検索

卒業生の声、インターンや会社見学での現場の雰囲気

現場を見ないまま入社するのは非常にリスクが高いため、可能であれば見学や説明会は必ず参加するようにしましょう。

就職するだけでなく「働き続けること」を意識しよう

就職活動では「どこに入るか」に注目しがちですが、本当に大切なのは「入った会社でどれだけ自分らしく、安心して働けるか」です。

学歴に関係なく、次のような視点で職場を探すことが大切です：

「自分の性格に合うか」（接客が好き／モノづくりが好きなど）

「長く働ける環境があるか」

「スキルや資格が身につくか」

高卒だから不利、という考えを捨てて、むしろ「若くしてキャリアを始められる」という優位性を活かして、成長と安定を手に入れる就活を進めていきましょう。

高卒就活生に必要な「面接力」とは？

高卒就活では、大学生よりも早く選考が始まり、たった1社への応募で進める“1人1社制”の中で、面接の重要度は非常に高くなります。企業にとっても、高卒採用では「学歴」よりも「人柄」や「基本的な姿勢」が重視されるため、面接＝人物評価の場と考えて臨む必要があります。

大学生のようにインターン経験やサークル活動を語るわけではないからこそ、高卒ならではのアプローチで自分を伝えることが大切です。

自己PRは「経験」より「姿勢」で勝負する

① 成績や受賞歴に頼らなくていい

高校生活の中で、特別に目立った経験がないと不安に感じる人も多いですが、面接官が見ているのは「どんな姿勢で物事に取り組んできたか」です。

たとえば：

バイトをコツコツ3年間続けてきた

部活でレギュラーではなかったが最後まで続けた

家庭の事情で忙しい中でも皆勤を達成した

こういった取り組みは、責任感・継続力・忍耐力として伝えることができます。

② 高校生活での「日常の努力」が材料になる

高卒就活では、大学受験と違って「自分がどう育ってきたか」を問われることが多いです。普段の生活での小さな努力こそが、立派なアピール材料になります。

たとえば：

朝早く起きて家事をしてから登校していた

クラス委員を自分から引き受けた

得意でなかった数学を授業後に先生に質問して克服した

このように、「当たり前のことを、きちんとやる力」が伝われば、評価されやすくなります。

面接でよく聞かれる質問と、その対策

面接では、「自己PRしてください」だけでなく、さまざまな角度から質問が投げかけられます。ここではよくある質問とその意図、答え方のコツを紹介します。

① 志望動機「なぜこの会社を選んだのか？」

意図：企業への理解度・意欲・事前準備を確認したい
コツ：会社の特徴を調べ、「自分の価値観と合っている」と伝える

例：
「人と接するのが好きで、説明会で社員の方々が丁寧に話してくださった姿を見て、私もこの環境で働きたいと感じました。」

※「家から近いから」だけでは不十分。業務内容や企業文化への言及を忘れずに。

② 自己紹介・自己PR「あなたはどんな人？」

意図：簡潔に話せるか、自己理解があるかを見る
コツ：「長所→エピソード→どう仕事に活かせるか」の流れで構成する

例：
「私は責任感が強い性格です。部活動では備品管理を任され、最後まで忘れずに取り組みました。この責任感を活かして、業務でもミスなく確実に取り組みたいです。」

③ 長所・短所「自分で自分をどう見ている？」

意図：客観的な自己分析ができているか
コツ：短所も改善の努力を添えてポジティブに

例（短所）：
「緊張しやすいところがありますが、最近は事前準備を徹底することで少しずつ克服できています。」

④ 入社後にやりたいこと・目標

意図：将来像や成長意欲を見るため
コツ：無理に“すごい夢”を語らず、堅実に学びたい姿勢を示す

例：
「最初は仕事を正確に覚え、ミスなく取り組むことを目標にしています。ゆくゆくは後輩に教えられるような存在になりたいです。」

話す内容だけでなく「話し方」も見られている

① 声のトーン・表情・姿勢が評価ポイント

はきはきした声（聞き返されないように）

笑顔（表情が硬すぎないように）

背筋を伸ばす、相手の目を見る（礼儀）

第一印象は数秒で決まると言われています。話す内容がよくても、暗く小さな声では評価されません。

② 敬語の使い方は「完璧」より「丁寧さ」

間違っても焦らない

「○○させていただきました」が多すぎないよう注意

礼儀正しく、誠実に話すことが一番大切

面接練習は「やればやるほど」上手くなる

面接は、才能ではなく「慣れ」がものを言います

クラスの友人や先生と模擬面接を繰り返す

鏡の前で話す練習をする

自分の声を録音して聞いてみる

就職活動において、一番差がつくのは“準備量”です。特別な経験がなくても、「伝える力」を磨けば、きっとあなたらしい良い企業に出会えます。

高卒＝キャリアの限界、ではない

高卒で就職したからといって、出世できない・昇給しないという時代は終わりつつあります。もちろん、大卒や専門卒に比べて初任給が低かったり、昇進のスピードが異なるケースもありますが、現場で評価され、信頼され、実績を積めば、誰でもキャリアアップは可能です。

むしろ、早くから社会経験を積んでいる分、若いうちに責任あるポジションにつけるチャンスも高卒にはあります。重要なのは、入社後の「働き方」と「学び方」です。

キャリアアップの道は1つではない

キャリアアップとは単に「昇進」や「昇給」だけではありません。高卒就職後に目指せる成長ルートには、いくつかの種類があります。

① 現場のリーダーになる

製造業・物流・販売などの職種では、現場での信頼が評価に直結しやすいです。業務の正確さ、スピード、後輩指導の丁寧さなどが積み重なると、現場のチームリーダーや班長など、管理的ポジションへの昇格が可能です。

リーダー職になることで：

役職手当が付く

評価制度で等級が上がりやすくなる

昇進ルートに乗れる可能性が高くなる

② 資格取得による専門職化

資格によっては、手当が付いたり、業務内容が広がったりすることがあります。特に国家資格や専門資格を取ると、社内でも重宝されやすくなります。

例：

フォークリフト、クレーン、危険物取扱者 → 工場・倉庫

介護福祉士、保育士、社会福祉士 → 福祉・保育系

宅建、建築施工管理技士 → 建築・不動産

電気工事士、ボイラー技士 → 設備・保守

多くの会社が「受験費用補助」や「研修支援制度」を用意しており、学歴より“資格”が強みになる職場も多数存在します。

入社後に信頼される人の共通点

企業の人事担当者や現場の上司に話を聞くと、次のような特徴を持つ高卒社員は、評価が高く、昇進しやすい傾向があります。

① 素直に学ぶ姿勢がある

「わからないことはすぐに聞く」「指摘されたことを次に活かす」など、学ぶ姿勢がある人材はどの現場でも好かれます。

「教えたことをメモして実行してくれる」

「何度言っても変わらない人とは違う」

素直であることは、スキル以上に価値があると評価されることもあります。

② 時間を守る・遅刻をしない

社会人として基本的なことですが、遅刻・無断欠勤をしないことが最大の信頼構築です。特に高卒の場合、「若いから不安」と思われることがあるため、逆にこのあたりをきっちり守ると「安心して任せられる」と見なされます。

③ 人に頼るのが上手い

「全部自分で抱え込む」のは評価されません。むしろ、「○○さんに確認します」と言える人のほうがトラブルを防ぎ、周囲の協力を得やすくなります。

指示を整理して聞き直す

同僚と連携して仕事を進める

上司に相談できる柔軟さ

こうした「コミュニケーション力」は、学歴に関係なく伸ばせる能力です。

転職や異動でキャリアを広げる道もある

入社した会社でキャリアアップできるのが理想ですが、すべての会社が成長機会に恵まれているとは限りません。 その場合は、「社内異動」「転職」「社外の資格支援制度」などを活用することでキャリアを切り拓くことも可能です。

① 社内異動を希望する

営業から事務、製造から企画など、部署間の異動制度がある企業では、希望を出すことで職種転換が可能です。自分に合う仕事を見つけて、適材適所で活躍できるチャンスです。

② 転職は慎重に、でも前向きに

3年ほど勤務して実績やスキルが身についていれば、未経験OKの職種への転職や、同業他社へのキャリアアップ転職も視野に入ってきます。若さは転職市場で大きな武器です。

ただし、転職回数が多すぎると印象が悪くなるため、「なぜ辞めるのか」「次は何を目指すのか」を明確にしたうえで進めることが大切です。

まとめ：高卒でも、未来は変えられる

高卒だからといって、将来が限られる時代ではありません。むしろ、早く社会に出て経験を積めるという点では、大卒よりもリードしている部分もあります。

信頼される行動を続ける

学びを止めない

選択肢を広げる勇気を持つ

この3つを意識していけば、どんな職場でも求められる人材になることができます。

「高卒だから」ではなく、「高卒でもこれだけできる」を武器に、自分らしい働き方を掴み取りましょう。