エントリーシートの重要性を正しく理解する
エントリーシート(以下ES)は、就職活動の選考における最初の関門である。ESで落ちる学生も多く、就活において最大のボトルネックになりやすいフェーズだ。しかし、ES通過のコツを理解して書けば、通過率は格段に上がる。
企業はなぜESを課すのか?それは以下の目的があるからだ。
応募者の文章力・表現力を見る
自己理解の深さを確認する
企業・職種への志望度を測る
面接で深掘りすべき材料を収集する
つまり、ESは単なる作文課題ではなく「面接準備資料」でもある。ここで書かれた内容が、面接での質問に直結していくため、表面的な内容では通用しない。
エントリーシート通過率が低い典型的な理由
ESで落とされてしまう学生には共通の特徴がある。これらのポイントを外さないことが、通過率向上の第一歩だ。
1 内容が浅い・抽象的すぎる
「努力しました」「頑張りました」だけの抽象表現
具体的な数字・行動・背景が不足している
企業は、再現性のある行動エピソードを知りたいので、抽象的な表現では評価されない。
2 企業の求める人物像とズレている
汎用的な志望動機を全社にコピペして使っている
企業ごとの特徴を踏まえた内容になっていない
企業は自社専用にカスタマイズされている内容を重視する。
3 文章の構成がバラバラ
結論がなく、ダラダラと話が展開される
主語と述語の対応が崩れていて読みづらい
一文が長すぎる
文章力の差がESでは顕著に出る。論理的な文章構成を意識することが極めて重要である。
エントリーシートを書く前に必要な事前準備
ESを書き始める前に、しっかりと土台を整えることで、完成度が一気に高まる。以下の3つの準備を怠らないことが大切だ。
① 自己分析の深掘り
自己分析はESのすべての土台になる。特に「自分がどんな行動をとる人間なのか」を客観的に整理しておく必要がある。
強み・弱み
行動特性
過去の成功・失敗体験
他者からの評価
自己分析で重要なのは、抽象ワードではなく、具体的なエピソードを言語化することである。
② 企業分析の徹底
企業分析が浅いままESを書くと、志望動機が薄っぺらくなる。以下の情報収集が不可欠だ。
企業理念・ビジョン
主力事業・成長分野
社風・求める人物像
社員インタビュー記事
採用ページのキーワード
企業の「独自性」を把握することが差別化ポイントとなる。
③ 業界全体の理解
企業理解の前提として、業界全体の構造や課題を把握しておくと説得力が増す。
業界のビジネスモデル
業界の今後のトレンド
業界内でのその企業の立ち位置
これにより、企業選びの理由や将来貢献できる内容が具体化しやすくなる。
文章構成の基本テンプレートを押さえる
多くのESで通用する汎用的な文章構成パターン(PREP法+STAR法)をマスターしておくと、書きやすさが劇的に向上する。
H3 H3-1 PREP法(結論先行型)
P(Point):結論
R(Reason):理由
E(Example):具体例
P(Point):まとめ
H3 H3-2 STAR法(行動整理型)
S(Situation):状況
T(Task):課題
A(Action):行動
R(Result):結果
自己PRやガクチカで使うと特に有効。この2つの型を組み合わせるのがベストだ。
エントリーシートに求められる「読ませる技術」
採用担当者は大量のESを読む。だからこそ、読みやすさ・わかりやすさ自体が高評価につながる。
一文を長くしすぎない(40~50文字程度)
漢字・ひらがな・カタカナのバランスを意識
「~と思います」はなるべく避ける(断定表現を使う)
接続詞を適切に使い、流れを自然にする
文章技術の差は、読み手の疲労感に直結する。「読みやすさ=配慮力」と企業は見ている。
まとめ
ESは「文章力+自己理解+企業理解」で差がつく
事前準備を徹底するほど完成度が上がる
汎用テンプレートを活用し、型にはめる練習を積む
読みやすさを意識した文章表現を磨く
ガクチカ(学生時代に頑張ったこと)で差がつく理由
企業がESの中でも特に重視するのが「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)」である。この設問は多くの企業が共通して設けており、志望業界・職種に関わらずほぼ必須といえる。
なぜ企業はガクチカを重視するのか? その理由は以下の通りである。
困難に対する行動特性を知りたい
成長プロセスを確認したい
主体性や課題解決力を測りたい
入社後に活躍する可能性を予測したい
つまり、過去の行動から「将来活躍する姿」を企業は読み取ろうとしている。表面的な成果だけでなく、取り組みのプロセスや考え方の深さが評価の決め手になる。
ガクチカ作成で失敗する典型パターン
ガクチカを書き進める際、多くの学生が陥りやすい落とし穴がある。
1 実績自慢だけに終わる
「売上を〇〇倍にしました」「大会で優勝しました」と成果だけを述べて終わる。
企業が知りたいのは結果ではなく、そこに至るまでの行動や思考のプロセスである。
2 美談にまとめすぎる
すべて順調に進んだ話に仕上げてしまう。
企業は課題や失敗への向き合い方を重視するため、逆に信憑性が薄まる。
3 抽象表現で具体性が不足
「みんなと協力して頑張りました」「努力を重ねました」と漠然とした記述になる。
読み手は内容のイメージが湧かず、評価できない。
ガクチカは「ストーリー構成」が命
ガクチカは文章全体の流れを意識して構成することで、伝わりやすさが格段に上がる。おすすめは「課題発見→行動→工夫→成果→学び」の5段階構成である。
① 課題発見(状況説明)
取り組んだ背景やスタート時点の課題を提示する。
どんな状況だったのか?
どんな問題があったのか?
なぜそれに取り組むことにしたのか?
例:
大学2年時、所属していたサークルの新歓活動で、例年参加者が減少している課題がありました。
② 行動(主体性の提示)
自らどのように行動を開始したかを述べる。
何を目標に掲げたのか?
どのような主体的行動を取ったのか?
例:
参加率向上のために、他大学の新歓活動をリサーチし、学生目線で魅力的なコンテンツ企画を提案しました。
③ 工夫(思考力・改善力の提示)
途中での困難や試行錯誤のプロセスを詳しく描く。
どんな課題が出てきたか?
どのように乗り越えたのか?
他人をどう巻き込んだのか?
例:
新たにSNSを活用し、イベントごとの魅力発信を強化しましたが、投稿内容が硬すぎたため柔らかい表現に修正。反応率が徐々に向上していきました。
4 ④ 成果(数字・結果の提示)
行動の結果、どのような成果につながったかを定量的に示す。
どれだけ目標に近づいたのか?
どんな変化が起こったのか?
例:
結果として前年比150%の参加者増を実現し、サークルメンバー数も過去最多となりました。
5 ⑤ 学び(成長実感の提示)
今回の経験から得た気づき・成長・今後への活かし方を伝える。
どんな力が身についたのか?
社会人になった後にどう活かせそうか?
例:
問題の本質を考え抜く重要性を学び、今後も柔軟な改善姿勢を大切に業務に取り組んでいきたいです。
ガクチカに使えるネタの選び方
1 「大きな実績」がなくても良い
海外留学や起業経験がなくても問題はない。
日常の中にある主体的行動エピソードが評価対象。
2 企業が重視するのは「行動の再現性」
入社後も主体的に動ける人材かどうかを企業は見ている。
結果よりも「考え→行動→改善」のプロセスを描くことが重要。
3 複数パターンを準備しておく
志望企業によって重視する要素は異なるため、ガクチカのネタも複数用意しておくのが有利になる。
チームワーク系エピソード
リーダーシップ系エピソード
改善提案系エピソード
粘り強さ系エピソード
企業に合わせて出し分けられる準備をしておくと、ESでも面接でも戦いやすくなる。
数字を盛り込むだけで印象が変わる
ESで具体性を高める最大のテクニックが「数字の活用」である。
売上〇〇万円増
参加者〇〇人
来場数前年比〇〇%増
提案採用率〇〇%
改善後の成果〇〇件向上
数字は「努力のインパクト」を一目で伝えてくれる武器となる。多少概算でも構わないので、積極的に数値化する工夫を心掛けよう。
ガクチカ例文(完成例)
【サークル新歓活動の改善】
大学2年時、所属サークルの新歓参加者減少という課題に直面しました。例年参加者は10名程度に留まり、将来の活動継続が危ぶまれていました。私は状況を打破すべく、他大学の取り組みを参考に、SNS活用を中心とした新たな広報戦略を提案。友人らの協力を得て、投稿内容の表現改善やキャンパス内でのポスター設置など多角的に施策を展開しました。結果、参加希望者は前年比150%となり、過去最多の新入生獲得に成功。問題を細分化し、仮説検証を重ねる重要性を学びました。この経験を活かし、今後も柔軟な発想と行動力で課題解決に挑みたいと考えています。
まとめ
ガクチカは「課題発見→行動→工夫→成果→学び」で構成する
結果ではなく「行動プロセス」を中心に描く
数字を活用して具体性を高める
企業に応じて複数パターンを用意しておくと有利
志望動機を深掘りして書く力を磨く
エントリーシートの通過率を左右するもう一つの重要ポイントが「志望動機」である。ガクチカと並んで必ず問われる設問であり、ここでも多くの学生が通過を逃してしまっている。
志望動機は企業側が最も注目するポイントの一つであり、企業理解・自己理解・将来像がどれほど具体的に整理されているかを測る項目だ。逆に言えば、ここをしっかり作り込むだけでも、ES通過率は大きく上昇する。
志望動機が浅いと落ちる典型パターン
採用担当者が読み飽きるNG志望動機のパターンをまず整理しておこう。
1 汎用性の高いコピペ型
「御社の成長性に魅力を感じた」
「人々の役に立ちたい」
「若手が活躍できる環境に惹かれた」
一見よさそうに見えても、どの企業でも通用してしまう内容では刺さらない。採用担当は「なぜうちなのか」を知りたいのだ。
2 理由が自己都合に偏りすぎ
「福利厚生が充実している」
「勤務地が希望に合っている」
「知名度が高い」
もちろん重要な要素ではあるが、企業側の視点が欠けている志望動機は魅力に欠ける。
業界理解が浅い
業界の役割・特性・今後の課題に触れていない
企業独自の特徴に触れていない
企業の特徴に沿った内容になっていないと、採用担当は「志望度が低い」と判断する。
志望動機は「3段階」で整理する
志望動機を作成する際は、以下の3段階で構成を整理するとわかりやすくなる。
① 業界志望理由
まずは「なぜこの業界なのか」を明確に述べる。
業界の役割・貢献性
業界の将来性・課題
自身の興味・関心との接点
例:
私は人々の生活を支える物流業界に関心を持っています。特にEC市場の拡大に伴い、物流の効率化・高付加価値化が重要になる中、その成長に貢献したいと考えています。
② 企業志望理由
次に「なぜこの企業なのか」を具体的に述べる。
企業の独自性・強み
他社との違い
共感した理念・ビジョン
例:
貴社はAIを活用した最適配送システムをいち早く導入し、業界の中でも先進的な取り組みを行っている点に魅力を感じています。
③ 自己の適性・貢献意欲
最後に「自分ならどのように活躍できるのか」を示す。
自身の経験や強み
企業でどのように活かすのか
入社後の成長意欲
例:
大学時代のアルバイトで新人教育に携わった経験から、現場を支えるオペレーション改善に興味があります。入社後は現場の課題解決に積極的に取り組み、より効率的な物流体制構築に貢献したいと考えています。
志望動機作成の情報収集ポイント
具体性ある志望動機を作るには、企業に関する情報収集が不可欠だ。以下の情報源を活用しよう。
1 公式採用サイト
企業理念・ビジョン
事業戦略
求める人物像
企業が最もアピールしてほしい情報が詰まっている。
2 IR資料・決算説明会
数値で示される事業規模
成長戦略・新規事業
経営者の考え方
特に総合職志望者は、経営視点を入れると説得力が増す。
3 社員インタビュー記事
現場社員の仕事内容
仕事のやりがい・課題感
会社の雰囲気・文化
自分の将来像をイメージしやすくなる情報源。
4 業界団体・業界新聞
業界の課題・最新動向
法規制の変化
技術革新の方向性
「業界理解の深さ」は志望動機の説得力を高める重要要素となる。
志望動機例文(完成例)
私は人々の生活インフラを支える物流業界に関心を持っています。近年EC市場の成長や災害対応力の強化が求められる中、物流の安定運営は社会的な使命を担うと考えています。
中でも貴社はAI最適化を用いた配送システムの先進性や、社員一人ひとりの現場改善提案を重視する社風に魅力を感じました。大学時代のアルバイトでは新人育成とマニュアル改善に取り組み、現場効率の向上に貢献した経験があります。入社後は現場起点の課題発見力を活かし、貴社の持続的成長に貢献したいと考えています。
志望動機は「オリジナルの言語化」が最大の武器
志望動機作成における最大のポイントは、他人の文章を真似せず、自分の言葉で書き切ることである。
決まり文句のコピペは見破られる
自身の経験と企業情報をつなげることが重要
面接で自信を持って語れる内容に仕上げる
「あなたしか書けない志望動機」になっているかが通過率を左右する。
まとめ
志望動機は「業界志望→企業志望→自己適性」の3段階構成が基本
企業研究を徹底し、他社と比較できる深堀りが重要
公式サイト・IR資料・社員インタビューなど多様な情報源を活用
決まり文句を避け、オリジナルの言葉で仕上げることが差別化の鍵
自己PR・長所短所・その他設問の書き方徹底対策
エントリーシートではガクチカや志望動機以外にも様々な設問が課される。中でも自己PR、長所短所、企業によって特徴的な設問などは、完成度の差がそのまま評価の差に直結する。ここを丁寧に作り込むことで、通過率はさらに高められる。
自己PRは「行動・成果・再現性」で語る
自己PRは自分の強みを企業にアピールする最大の場だが、単なる自己紹介や性格紹介ではない。入社後に活躍できそうだと感じさせるエピソード型の文章が最も評価される。
1 自己PR構成テンプレート
以下の構成で整理すると書きやすい。
結論(自分の強み)
強みを発揮したエピソード(STAR法で)
その結果・成果
学んだこと
入社後の活かし方
2 自己PR例文
私は「周囲を巻き込み課題解決する力」が強みです。
大学のゼミ活動で学園祭イベントの運営を担当した際、準備段階でメンバー間の認識ズレが発生し、進行が滞りました。私は各担当との個別ヒアリングを実施し、進行表や作業手順を整理・共有する仕組みを提案しました。結果、当日の運営はスムーズに進み、来場者満足度も高評価を得ました。課題発見と周囲との連携の大切さを学び、入社後も周囲を巻き込む推進役として貢献したいと考えています。
3 決まり文句の多用は避ける
「責任感が強い」「協調性がある」などのワードだけでは弱い。どんな場面でどう発揮したかを描くのが説得力の源泉となる。
長所短所の質問は「自己認知力」を測っている
長所短所は性格診断ではなく、自分を客観的に捉えられているかを見る質問である。正直に弱みを書くことで減点されることはなく、むしろ改善努力の姿勢が評価される。
1 長所の書き方
他設問(ガクチカ・自己PR)と整合性を取る
抽象表現ではなく行動ベースで語る
例:
長所は「計画力」です。複数の課題に直面してもタスクを細分化し、期限管理を徹底することで着実に進める力を培いました。
2 短所の書き方
短所を素直に認める
改善策・工夫を必ずセットで述べる
例:
短所は「完璧を求めすぎて初動が遅くなる傾向」です。現在は事前に優先順位を整理し、60%段階でまず行動に移す習慣を意識しています。
3 NGな短所の例
「短所はありません」
「優柔不断なところが短所ですが、人の意見を大切にしています(長所にすり替え型)」
短所は弱みとして受け止めつつ、成長の余地として言語化する姿勢が大事である。
オリジナル設問は「企業理解」と「思考力」を見る
一部の企業では特徴的な設問が課される。例えば以下のようなパターンがある。
1 キャリアビジョン系
5年後、10年後の自分をどう描いているか
→具体的すぎず柔軟な成長意欲を見せるのがポイント。
例:
まずは現場で経験を積み、将来的には現場改善のリーダー的存在として周囲を支援できる人材を目指したいです。
当社の魅力・他社との違い
企業理解度の深さを確認している
→公式HPに書いてあることをなぞるだけでは弱い。自分の言葉で咀嚼した独自視点を加えると強い。
例:
御社は「若手の成長支援文化」に加え、現場の改善提案が上層部に届きやすい風土が印象的でした。
困難経験・失敗談
挫折経験を聞く企業も増えている
→失敗の捉え方、立て直し力、学びへの昇華が評価対象。
例:
〇〇で計画通りにいかず失敗。メンターからの助言をもとに〇〇の工夫を重ね、乗り越えました。
エントリーシート全体を仕上げる「仕上げの確認チェックリスト」
最後に、完成したエントリーシートを提出前に総点検する項目をまとめる。
1 内容面
企業ごとにカスタマイズされているか
ガクチカ・志望動機・自己PRが一貫しているか
数字や具体例を盛り込んでいるか
成果だけでなく行動プロセスが描けているか
課題への向き合い方、改善努力が伝わるか
2 文章面
一文が長すぎない(40~50文字程度)
主語と述語の対応が自然か
誤字脱字・誤用がないか
不要な敬語・言い回しの冗長さを削除
客観視
家族・友人・キャリアセンターなど第三者に読んでもらったか
面接で深掘られても自信を持って話せる内容になっているか
仕上げ確認は、書いた本人以外の視点も取り入れることが極めて重要である。
まとめここまで4回に渡り、エントリーシートの通過率を高める具体的な書き方を解説してきた。最後に全体像を整理する。
事前準備:自己分析・企業研究・業界研究を徹底
ガクチカ:行動プロセス中心のストーリー構成
志望動機:業界→企業→自己貢献の3段階構成
自己PR・長所短所:具体エピソードと改善努力
オリジナル設問:企業の意図を読み取り、自分の言葉で書く
仕上げ:第三者チェックと面接展開まで見越した内容確認
ES対策は型を知り、練習を重ねることで確実に上達する。時間をかけてPDCAを回していけば、通過率は大きく向上していく。
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます