いまやESは「見られる」より「ふるい落とす」ためのツール
WEBエントリー(エントリーシート)は、新卒採用において最初に企業に自分を知ってもらうための書類です。しかし、現実には多くの企業がエントリー段階で「通す」より「落とす」ために使っているのが実情です。
特に大手企業や人気企業の場合、1社あたり数千〜数万件のエントリーが来るため、担当者が1件あたりにかけられる時間は1〜2分程度です。つまり、「なんとなく書いたES」や「どこかで聞いたような内容」では、読まれることなく不合格になる可能性が高いのです。
なぜ「内容が悪くないのに落ちる」のか?
「文章力はあると思うのに落ちる」「誤字脱字もないし、自分なりに頑張って書いたのに通らない」
こう感じる就活生は少なくありません。しかし、その原因は往々にして“見せ方のズレ”にあります。
企業のチェックポイントと就活生のズレ
就活生は「自分をよく見せたい」「正直に伝えたい」という思いでESを書きますが、企業が求めているのは“戦力になる見込みがあるかどうか”です。
採用担当者は以下のような視点でESを見ています:
この学生は仕事に対して前向きか?
どのような価値観・行動特性を持っているか?
自社との相性が良さそうか?
配属後、成長しそうか?辞めなさそうか?
つまり、文章が丁寧かどうか以上に、「この人はうちで活躍できそうかどうか」が判断軸になっているのです。
WEBエントリーにおける3つの「見られ方」
WEBエントリーは、単なる自己紹介ではありません。「企業側の視点」でどのように読まれているかを理解することで、落ちないESに近づきます。
① 「読む」ではなく「選別する」ためのツール
1件あたりのESを丁寧に読む余裕はない企業が大多数です。そのため、企業は「通す理由」ではなく「落とす理由」を探していることが多いという前提を持つ必要があります。
書き出しが抽象的
具体性がない
どの会社でも使いまわせそう
このような内容は、数秒でスキップされる可能性が高いです。
② 読まれるのは「最初の1行」で決まる
ESの冒頭、特に「志望動機」の1行目や「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)」の導入文は、採用担当者が続きを読むかどうかを決める分岐点です。
逆に言えば、1行目で「おっ」と思わせられれば、その後の数百字も読んでもらえる可能性が上がります。
③ 定量情報があると印象が大きく変わる
WEBエントリーの多くは、文字数が限られています。200〜400字という短文の中で、「何をして」「どうなったのか」を端的に伝えるためには、数字や固有名詞が極めて有効です。
「◯名の中からリーダーに選ばれた」
「売上を前年対比120%に引き上げた」
「全国◯位に入賞した」
このような表現は、抽象的な「努力しました」よりもはるかに評価されやすくなります。
評価されるESに共通する3つの条件
① 独自性より「分かりやすさ」
「人と違うことを書かなきゃ」と考えるあまり、奇をてらった内容になってしまう就活生がいます。しかし実際には、普通の経験でも、構造的に整理されていれば十分に通過可能です。
構成例:
何をやったか(背景)
どんな課題があったか(問題意識)
どう取り組んだか(行動)
何が変わったか(成果)
この流れを意識するだけで、文章がぐっと読みやすくなります。
② 「その企業だからこそ」の納得感
志望動機が「御社の成長性に魅力を感じた」「社員の人柄が良かった」だけでは、どの会社にも当てはまる内容になってしまいます。
企業が求めているのは、「なぜ数ある企業の中でうちなのか?」に対する説得力です。
自分の価値観と一致している点
実際の仕事・商材に対する理解
成長の方向性と会社のビジョンの一致
このような視点から書けているESは、通過率が高くなります。
③ 書き手の人柄・思考力が伝わる
最終的に通過するESは、「この人に会ってみたい」と思わせる何かを持っています。
それは、文章のうまさや経験のすごさではなく、人柄や価値観が明確に伝わることです。
過去の失敗から何を学んだか
仲間との関わりで何を大切にしたか
なぜその選択をしたのか
こういった“考えのプロセス”が見える文章は、印象に残ります。
まとめ:WEBエントリーは「評価される設計」で決まる
WEBエントリーは、ただ書けばいいものではなく、「どう見られるか」を意識して構成することがカギです。
「通るため」の文章構造を知る
最初の1行で読み手の目を止める
数字・具体性を積極的に使う
志望理由には「納得の軸」を持つ
このような視点を持つことで、内容が平凡でも、“読まれるES”に変えることができます。
「頑張った」だけでは通らない理由
WEBエントリーのESでは、「私は◯◯を頑張りました」という表現が多く見られます。しかし、それだけでは企業は評価しません。
なぜなら、「頑張ったこと」は主観に過ぎず、その頑張りが“どのような価値を持つか”が伝わらない限り、判断できないからです。
つまり、企業はESで次のような問いに答えようとしています:
どんな人物か?
論理的に物事を整理できるか?
他の人とどう違うか?
自社で活躍できる可能性があるか?
この観点を押さえないESは、いくら文章力が高くても通過しません。
評価されるESに必要な4つの視点
① 再現性(その行動は今後にも活かせるか?)
企業は、あなたの過去の経験を通じて、「この人が入社後にも活躍してくれそうか」を見ています。
そこで重視されるのが“再現性”。
これは、「その経験が1回限りの偶然なのか、それとも再現できる力なのか?」という視点です。
再現性を伝えるためには、行動の背後にある「思考」が必要です。
❌例(NG):「アルバイトで売上を伸ばした」
✅例(OK):「売上が伸び悩んでいた要因を特定し、ターゲット層向けのPOPを自作したことで来店数が増えた」
後者のように、「考えて動いた」「工夫をした」ことがあると、再現性がある=入社後も同じように活躍しそう、と評価されやすくなります。
② 一貫性(価値観や判断軸がブレていないか)
ESの中で複数の設問がある場合、「ガクチカ」「自己PR」「志望動機」などの間に一貫性があるかどうかも重要です。
例えば、「チームで成果を出す力が強み」と言いながら、志望動機で「個人で裁量を持って働きたい」と書いてしまうと、読み手は混乱します。
一貫性を出すためには、自分の価値観や判断軸を1つに定め、それを各設問でブレずに使うことが大切です。
たとえば:
「困難に立ち向かう姿勢」
「相手の立場で考えること」
「改善志向で行動すること」
このような軸を最初に決めておくと、全体のESがブレにくくなります。
③ 論理性(構造化されているか)
読みやすさ、伝わりやすさの土台となるのが「構造化」です。
どんなにいい経験でも、伝える順番や論理が整理されていなければ、採用担当者は途中で読むのをやめてしまいます。
代表的な構成として、「PREP法」や「STAR法」があります:
PREP法:Point → Reason → Example → Point
STAR法:Situation → Task → Action → Result
たとえば、ガクチカで「アルバイトで成果を出した」ことを伝えたいなら、
背景(どんな店でどんな状況か)
課題(売上が落ちていた、来店数が減っていた等)
行動(自分がどう動いたか)
結果(何が変化したか)
という流れで書くだけで、内容の印象は大きく変わります。
④ 納得感(志望動機がその会社である理由になっているか)
一番多く落ちるのが「志望動機」です。
多くの就活生が、以下のような内容を書きがちです:
「説明会で社員の人柄に惹かれました」
「社会貢献性が高いと思いました」
「業界として伸びていると感じました」
どれも否定はされませんが、「なぜうちの会社でなければならないのか?」には答えていません。
企業が納得する志望動機には、次の3点が含まれています:
自分の価値観・強みとの一致
企業理解の深さ(事業内容・将来性・社風)
他社との違いを言語化できている
この3点を押さえることで、「うちに来てほしい」と思わせるESに近づきます。
良いES」と「悪いES」の違いは経験の“質”ではない
評価されるESを書く上で最も誤解されているのは、「良い経験をしていないと、いいESは書けない」という思い込みです。
実際は、普通の経験でも、どう伝えるか(構造・分析・結論)でいくらでも評価は上がります。
例えば:
学園祭の実行委員 → リーダーとしてどう工夫したか
飲食のアルバイト → 接客やオペレーション改善への取り組み
家庭の事情で働きながら通学 → 時間管理能力や責任感の表現
このように、“小さな経験”も“伝え方”で評価される内容になります。
まとめ:企業が見るのは「経験」ではなく「思考と行動の筋道」
企業がESで見ているのは、過去の出来事そのものではなく、その中でどんな思考をして、どう動いたか、そしてそれをどう再現するかです。
✅ 一貫した価値観があるか?
✅ 構造的に整理されているか?
✅ 再現性のある行動がとれているか?
✅ 志望理由が「その企業だからこそ」になっているか?
これらを意識すれば、特別な経験がなくても「通るES」は書けます。
H2 落ちるESには共通点がある
ESが通らない理由は「経験が地味」「実績がない」からではありません。
実際には、多くのNG ESは“読みづらい”“意図が伝わらない”ことが原因です。文章として成立していても、企業にとって「選びづらい」内容になっている場合、評価はされません。
NGパターン①:「抽象ワードの連発」
典型例:「私は常に努力し、リーダーシップを大切にしてきました。」
一見よさそうに見えますが、「努力」や「リーダーシップ」といった抽象語は、具体性に欠けるため読み手に伝わりにくいのです。
このような抽象的な言葉には、以下の問題があります:
解釈が人によってブレる(採用担当者が判断しにくい)
誰でも言えてしまう(差別化にならない)
実際に「何をしたのか」が不明
改善方法:抽象語は「具体行動」とセットで使う
先の例なら、こう改善できます:
「私はサークルでの合宿運営において、日程調整や予算管理を任され、周囲と協力しながら計画を立てた経験があります。この際、常に“全体の進行を意識した行動”を心がけたことで、合宿を予定通り実現できました。」
このように、抽象語は「どんな場面で発揮されたか」を具体的に語ることで、説得力が増します。
NGパターン②:「エピソードが一貫していない」
典型例:「自己PRでは“協調性”をアピールしているのに、ガクチカでは“個人プレーで成果を出した話”」
読んでいる側からすると、「どんな人物なのか」がつかめず評価できません。
特にWEBエントリーでは、短い文量の中で複数の設問に答える必要があります。そのため、一貫性がないと“人物像”がぼやけてしまい、記憶にも残りません。
改善方法:「軸」を最初に決めて統一する
たとえば「改善志向」という軸を据えると、ガクチカでも自己PRでも、「何かをより良くしようとした行動」に統一することができます。
✅【ガクチカ】売上が落ちていた学祭の模擬店で、POPや接客方法を改善して来場数を増やした
✅【自己PR】アルバイト先でマニュアルの非効率さに気づき、簡略化した提案を行い採用された
このように価値観や行動原理を貫くことで、人物像がクリアに伝わりやすくなります。
NGパターン③:「企業名を入れただけの志望動機」
典型例:「◯◯という御社の理念に共感し…」「説明会で社員の方が魅力的で…」
これらの動機は、他社でも通用する=代替可能と判断されることが多く、差別化になりません。
特にWEBエントリーでは、1人の担当者が数百件を読む可能性があるため、「どこかで見たような志望動機」は埋もれます。
改善方法:「企業の事業・仕事内容」と「自分の経験・志向」を接続する
具体的には、以下の流れで書くと強くなります:
自分の価値観や興味(例:課題解決への関心)
それが表れた経験
企業の事業や職務にそれがどう活きるか
例文:
✅「私は課題発見と改善にやりがいを感じるタイプです。学生時代、◯◯活動で非効率だった業務を自ら分析・見直し、作業時間を短縮しました。説明会で拝見した貴社の◯◯という事業では、まさにそうした改善意識が活かせると感じ、強く志望しております。」
このように、「自分の過去」と「企業の未来」をつなぐことで、志望動機の納得感は大きく増します。
NGパターン④:「文字数調整のために冗長表現を入れる」
典型例:「〜という経験を通じて私は成長することができました。今後もこのような経験を活かして、社会に貢献していきたいと考えております。」
このような締めの文章は、悪くはないものの中身が薄く、印象に残りにくいです。
WEBエントリーでは、限られた文字数の中で価値を伝える必要があるため、「意味のない一般論」は避けた方がよいでしょう。
改善方法:最後まで「事実ベース」で締める
たとえばこう書き換えられます:
✅「この経験を通じて、自ら課題を特定し周囲を巻き込むことで成果を生む喜びを得ました。今後もその姿勢を大切にし、貴社の◯◯事業で価値提供に貢献していきたいと考えています。」
冗長な一般論ではなく、「経験→学び→今後の活かし方」までを端的に伝えると、最後の一文が締まります。
まとめ:「読まれるES」には共通する“構造美”がある
NGパターンの多くは、経験の質ではなく構成や伝え方の問題に起因しています。
ES通過率を上げたいなら、まずは以下の点をチェックしてみてください。
❌ 抽象ワードが並んでいないか?
❌ 内容に一貫性がないまま書き進めていないか?
❌ 志望動機が誰にでも当てはまる内容になっていないか?
❌ 終わりの文章が無意味にふわっとしていないか?
これらを改善するだけで、「読みやすい」「納得できる」ESに生まれ変わります。
特別な経験がなくても、“伝え方次第で評価は大きく変わる”ということをぜひ意識してみてください。
媒体ごとに「読まれ方」はまったく違う
WEBエントリーのESは、媒体によって設問形式・チェックされるポイントが異なります。
たとえば「マイナビのオープンES」と「OfferBoxのスカウト型ES」では、企業が注目する視点も、文章の読み方も異なるのです。
媒体に合わせてESを最適化することで、「読まれやすさ」と「刺さりやすさ」が大きく変わります。
マイナビ・リクナビのES(オープンES)
特徴:汎用性+大量応募を前提とした設計
すべての企業に同じフォーマットで出す設計(オープンES)
応募数が多いため、読み手は“スクリーニング”中心
読まれる時間は「1枚あたり数十秒」
攻略ポイント:
冒頭で結論を明確に(PREP法が有効)
一貫性あるキャラクター像を作る(志望動機・ガクチカがバラバラにならないよう注意)
キーワードで引っかける(「協調性」「改善」「挑戦」など評価されやすい単語を配置)
例:
✅「私はチームの成果を最優先に考え、改善提案で価値を出すことにやりがいを感じます。大学時代、所属サークルで〜(略)」
※「誰でも読みやすく」「何の強みかがすぐわかる」ことが重要です。
OfferBox・キミスカのES(逆求人系)
特徴:学生から企業へアプローチではなく、企業からのスカウトが基本
自分の情報を公開し、企業が見て「会いたい」と思えばオファーが来る
エピソードの内容だけでなく、“個性”や“方向性”がはっきり伝わるかが重要
攻略ポイント:
他の学生と違う“志向性”を明確に書く
(例:「失敗経験」や「挑戦を繰り返したプロセス」なども高評価)
仕事の興味対象を言語化する
(例:「人の行動変容に興味があり、広告やマーケティングに関心を持っています」など)
OfferBoxでは、自己PR欄を活用して“自分なりの言葉”を使うことで、スカウト率が上がります。
オープンES(共通フォーマット)を活用する場合
特徴:複数企業に提出する形式。設問数は限られ、情報量も少ない
よくある設問:
学生時代に力を入れたこと
志望動機(任意・設問なしの場合も)
自己PR(400字〜800字)
攻略ポイント:
文字数ギリギリまで使って情報密度を高める
(400字指定なら395字以上を目安に)
数字や結果を明示して印象を残す
(「30%改善」「前年比1.5倍」など)
読み手の立場で「なぜ採るべきか」が伝わるように書く
ポイントは、自分のことを“見せたいこと”ではなく“企業が知りたいこと”として整理する視点です。
業界別に変えるべきESの切り口
コンサル・金融系:論理性とリーダーシップが鍵
定量目標の達成、改善提案、PDCAの経験
主観よりも客観評価を重視
✅例:
「◯◯の売上が落ちていたことに課題意識を持ち、A/Bテストを提案し改善施策を実行した結果、売上を30%向上させました。」
広告・企画・ベンチャー系:独自視点と行動量が評価される
型にとらわれずに動いた経験
視座の高さ(事業全体を見る視点)やユニークな発想
✅例:
「学内イベントで“廃止予定”だった企画を、アンケートと提案で復活させ、500人の集客に貢献しました。」
メーカー・技術系:課題解決・継続力が重視される
長期的な取り組み、技術的な知識活用、地道な工夫
実験やプロジェクトでの役割など
✅例:
「2年かけて卒業研究を行い、失敗の連続から仮説検証の精度を高め、最終的に論文として評価を受けました。」
人材・教育・福祉系:人への思いやりや対話力が評価される
相手の立場で考えた経験
誰かの成長を支援したこと
✅例:
「学習支援ボランティアで、学習意欲が低い生徒に対して個別の目標設定と面談を重ね、半年で習慣化を実現しました。」
まとめ:ESは“媒体と業界に合わせて最適化”する時代
一律に「ESはこう書けば良い」という時代は終わりつつあります。
WEBエントリーが主流になった今こそ、以下のポイントが重要です:
✅ 媒体の特性(オープンES、逆求人型など)を理解して使い分ける
✅ 読まれるスピードを想定して、結論やキーワードで引っかかる構造にする
✅ 業界ごとの価値観・評価軸に合わせて表現を変える
✅ 経験より“伝え方”で通過率は大きく変わる
ESは、単なる自己紹介ではなく「企業に自分を売り込む営業資料」です。
同じ素材でも、見せ方・言い方で評価は大きく変わることを忘れず、媒体別・業界別の最適化を徹底しましょう。
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